生糸を作る実演が凄い、世界遺産に選ばれた群馬県の富岡製糸場に行きました

富岡製糸場

明治時代の生糸の工場として世界遺産に登録されている群馬県の富岡製糸場。草津温泉や群馬サファリパークなどと並んで群馬観光では定番スポットになりつつあります。今回は、富岡製糸場を見るために群馬県へ旅行をしてきました。

目次

富岡製糸場の概要

富岡製糸場とは、群馬県富岡市にある生糸の工場です。生糸を輸出して外貨を獲得することを目的として明治時代に設立されました。洋式の技術を導入して生産性を飛躍的に向上させるために、フランス人で生糸の専門家であった「ポール・ブリュナ」を指導者としました。当時の製糸工場としては世界最大規模を誇り、現在でもその優れた設備が変わらずに残されています。

2014年には「富岡製糸場と絹産業遺産群」として世界遺産に登録されています。富岡製糸場の他には、蚕(かいこ)の卵を低温で貯蔵して生糸の大量生産を可能にした「荒船風穴(あらふねふうけつ)」、養蚕業(ようさんぎょう:蚕から生糸を作る産業)の研究・開発に貢献した「田島弥平旧宅(たじまやへいきゅうたく)」、養蚕技術の学校として生徒に教育を行った「高山社跡」が世界遺産の構成要件に含まれています。富岡製糸場以外の世界遺産も見学は可能となっており、荒船風穴のみ料金が500円になります。

富岡製糸場の見学は、年末以外は無休で営業しています。営業時間は、午前9時から午後17時(最終受付は16時30分)です。料金は、大人1000円、大学生と高校生が250円、中学生以下が150円になります。

富岡製糸場の交通アクセス

ここでは、富岡製糸場の行き方を説明します。

電車やバスで行く場合

上信電鉄上信線「上州富岡」駅で下車し、徒歩で約20分です。お土産ショップや飲食店が多くあるので、街並みを眺めながらゆっくりと歩いて行くのもおすすめです。また、上州富岡駅の駅前から富岡製糸場までは「まちなか周遊観光バス」が運行しています。運賃は100円で、当日であれば何度でも乗り降りが自由になります。ただし、とても小さいバスで定員が限られているので、混雑時は乗れないことがあるかもしれません。

自家用車で行く場合

富岡製糸場には駐車場がないので、周辺の駐車場を利用することになります。民間や市営の駐車場がいくつかありますが、安くておすすめなのは「宮本町駐車場」です。富岡製糸場までは徒歩で約10分の距離にあり、駐車料金は最初の30分は無料で、それ以降は30分ごとに100円が加算されます。他には、上州富岡駅の近くに「富岡駅東駐車場」があります。こちらは徒歩で20分ほどかかりますが、24時間営業で無料になります。

富岡製糸場の見学方法

富岡製糸場の施設案内

富岡製糸場に着いたら、まず最初に入口で入場チケットを購入します。その際に、一人あたり200円で音声ガイドを借りることができます。音声ガイドは敷地内のおよそ15箇所で流れます。ただし、スマホがあれば通信料のみ自己負担で無料でガイドを聞くことが可能です。入場チケットを購入したら、専門家が富岡製糸場を案内してくれるガイドツアーに参加するか決めます。ガイドツアーに参加する場合には、後述する方法でチケットを購入します。ガイドツアーを利用しない場合には、後は富岡製糸場の敷地内を自由行動になります。上の写真のように、敷地内には歴史的な建物や設備がたくさんあります。一応、順路は用意されていますが、好きなように建物の中を見学してください。

ガイドツアーの参加、チケットの購入方法

富岡製糸場の専門家が解説をしながら案内してくれるガイドツアーが用意されています。ツアーの所要時間はおよそ40分です。自分のペースで見学することはできませんが、詳しい説明を聞けるので理解が深まります。私が行った時にはガイドツアーを利用している観光客を多く見かけました。ここからは、ガイドツアーへ参加する方法を説明します。

ガイドツアー整理券発売所

まず最初に、東置繭所の東側付近にあるガイドツアー整理券発売所に行き、チケットを購入します。ガイドツアーの料金は一人あたり200円です。

ガイドツアー出発場所

ガイドツアーは9時30分〜12時と13時〜15時30分の間を30分間隔で実施しています。整理券発売所でチケットを購入したら、自分が参加したいガイドツアーの時刻までに、上の写真にある出発場所に集合します。出発場所は個人用と団体用に分かれていますので、該当する方で座って待っていてください。出発時刻になると、スタッフが案内をしてくれます。ガイドツアーは解説員の声が聞こえるようにイヤホンを使うので、人数が多くて後ろの方になってしまっても問題はありません。

富岡製糸場の様子

それでは、富岡製糸場の様子や見所などについて紹介していきます。

東置繭所

東置繭所のレンガ造の外観

入り口から真っ先に目に入るのが東置繭所です。ここは、繭を貯蔵するための倉庫になります。外壁の赤いレンガには「木骨レンガ造」と呼ばれる西洋の建築技術が使用されており、通常よりも壊れにくくなっています。周辺には花壇があったり、記念撮影ができるパネルが置いてあったりするので、写真を撮ってみてください。ちなみに、スタッフに確認したところ、富岡製糸場の敷地内は基本的に写真撮影が許可されているそうです。ただし、一部の展示については撮影禁止の案内があります。

東置繭所の解説エリア

一番最初に行ってほしいところは、東置繭所の中にある解説エリアです。上の写真のように、富岡製糸場の役割や歴史などについて詳しい解説パネルが設置されています。なお、冬の時期の館内は非常に寒くなっています。スタッフに聞いたところ、建物が広くて暖房が効かないそうです。薄着で行くと解説を読むためにじっとしていられないほど寒いので、服装には注意が必要です。

東置繭所の解説エリア

また、富岡製糸場に関するDVDが上映しているので、絶対に見た方が良いです。内容は分かりやすく、事前知識がなくても十分に理解できます。何も知らずに敷地内を見学するよりも、ここでビデオを見て概要を把握しておくと、それ以降の見学が理解しやすくなります。上映時間は約20分です。

富岡製糸場の世界遺産認定証

世界遺産に登録された認定証も展示されています。東置繭所の解説エリアの隣には小さな売店があり、絹の製品やお菓子などを販売しています。私が行ったときには試食ができました。

フランス式の繰糸器

東置繭所では、明治時代に生糸を生産するために実際に使用していたフランス式の繰糸器を復元したものが展示されています。

繭から生糸を取り出す実演

ここでは、フランス式の繰糸器を使ってスタッフが実演してくれます。本物の繭(まゆ)から生糸ができる過程を解説しながら実際に見せてくれます。簡単に説明すると、最初に繭をお湯につけて柔らかくします。そして、繭から一本の糸を取り出して、それと同じことを複数の繭でも行って、取り出した数本の糸を束にします。後は、束にした糸を巻き取っていくと生糸が出来上がります。繭から全ての糸を巻き取ってしまったら、新たな繭に交換します。

繭から生糸を取り出す実演

こちらが実際に繭から巻き取られた生糸です。スタッフの説明が分かりやすく、疑問点は質問することもできるので、実演は絶対に見た方が良いです。個人的には、この実演が一番印象に残りました。一回あたりの実演は約30分です。実演日は毎週月曜日から金曜日の平日で、午前10時〜11時30分、午後14時〜15時30分に行われます。

手で触れる繭

様々な種類、色の繭が展示されています。上の写真にあるように、本物の繭を手で触ることも可能です。

東置繭所の2階

外階段を使って東置繭所の2階に上がることができます。2階は繭の保管場所として使われており、窓を開けて乾燥させていました。本来は非公開の場所ですが、現在は特別に公開していました。

西置繭所

西置繭所

国宝に指定されている西置繭所は現在工事をしています。ただし、ヘルメットを着用して見学することができます。料金は、ヘルメットの貸出料として、大人200円、中学生以下の子供が100円になります。西置繭所の建物の構造や歴史についての展示、修理の様子などを眺められます。また、製糸に必要な水を400トン貯蔵できる重要文化材の「鉄水溜」も見学できます。

ブリュナエンジン

ブリュナエンジン

生糸を生産するための機械を動かす動力源として使われた「ブリュナエンジン」です。

繰糸所

繰糸所の自動繰糸機

繭から糸を取る作業をしていた建物です。煮た繭から生糸を自動で取り出す「自動繰糸機」が当時のまま残されています。

繰糸所の自動繰糸機

自動繰糸機をアップで見るとこんな感じです。繰糸所では、現在も自動繰糸機を稼働させてシルクを製造している「碓氷製糸工場」のDVDを上映しています。

トラス構造の屋根

繰糸所の屋根は「トラス構造」と呼ばれる建築様式が採用されています。これにより、建物の中央に柱がなくても屋根を安定させることが可能になり、建物の作業スペースを最大限に広げることができました。

首長館(ブリュナ館)

首長館

富岡製糸場の建設を指導したポール・ブリュナが暮らしていた住宅です。ブリュナの雇用契約が満了した後には、工女の学校として使用されました。通常であれば首長館は非公開になっていますが、私が行った時には「はかる・しらべる」という期間限定の資料展を開催しており、館内に入ることができました。生糸の製造工程で使用された計測機器が多く展示されていました。

寄宿舎

富岡製糸場の寄宿舎

女性従業員が生活していた施設です。綺麗な白梅が咲いていました。

所要時間

全体の所要時間はおよそ1時間30分から2時間です。富岡製糸場には生糸を製造していた繰糸所だけではなく、女工館や診療所など、その周辺施設が多数残されています。しかし、建物の内部へ入って見学ができるのは、東置繭所、西置繭所、繰糸所だけです。残りの施設は、建物の外観を眺めたり、窓から室内を見るだけになります。しかも、西置繭所の見学は有料ですし、敷地内では食事が禁止されているのでレストランなどもありません。そのため、主な観光場所は東置繭所と繰糸所だけになります。館内の解説パネルや映像、生糸を製造する実演などを見ないのであれば、あっという間に見学は終わってしまい、退屈に感じてしまうはずです。せっかく富岡製糸場に来たのであれば、一から歴史を学ぶつもりでしっかりと解説を読むことをおすすめします。

混雑状況

今回は平日の午前中に行ったので、とても空いていました。ただし、お昼に近づくにつれて観光客が増え始めました。特に団体のツアー客が非常に多く、平日なのにかなり混雑していました。混んでいてもそこまで問題になる場所ではありませんが、なるべく午前中の早い時間帯に行くと良いでしょう。

周辺グルメ、お土産

富岡製糸場の周辺グルメ

富岡製糸場の周辺にはお土産ショップや食事処がたくさんあります。特に「絹石鹸(シルク石鹸)」の実演販売をしている店が多く、歩いていると何度も声をかけられます。食べ物に関しては、うどんや蕎麦の店がいくつかあり、食べ歩きグルメでは「かりんとう饅頭」や上州名物の「絹しゅうまい」などがあります。家族旅行やデートなどで盛り上がりそうな珍しい食べ物としては、「かいこの王国」という店があって、蚕の形をしたチョコレートを販売しています。

おぎのやの峠の釜めし

私がランチで食べたのは「おぎのや」という釜飯の専門店です。富岡製糸場の目の前にあるので、交通アクセスは便利です。店内にはテーブル席があり、温かいお茶がセルフサービスになっています。私が食べたのは「峠の釜めし(1000円)」です。鶏肉、しいたけ、ごぼう、栗、卵、杏子など様々なおかずが入った贅沢な釜飯です。どの食材も美味しくて、ご飯の量は少な過ぎずにボリュームがあります。漬物が付属しているので、ご飯が余っても問題ありません。値段は少し高めですが、予想以上に満足の味でした。

感想

今回は、群馬県の富岡製糸場に行ってきました。絹や生糸について全く知識のない状態で訪問しましたが、解説のパネルやビデオが分かりやすくて退屈しませんでした。特に、繭から生糸を製造する過程を実演してくれたことが、一番楽しかったです。ただし、全体的に学びの要素が強い観光スポットなので、幼い子供だとつまらないと感じてしまうと思います。世界遺産に登録されたことで、敷地内にはスタッフや警備員がやたらと多くいます。私が行った時には、女性のスタッフが近寄ってきて富岡製糸場について丁寧に解説してくれました。西置繭所や乾燥場などは工事中ですし、寄宿舎の一部は老朽化で崩壊しそうな雰囲気があります。現在の富岡製糸場は整備の途中段階であり、将来的に完成すればもっと満足度の高い観光名所になると思います。

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