東京都の上野にある国立科学博物館では、常設展の他に期間限定の特別展を開催しています。現在は、海の大型捕食者たちの生態を解説した「海のハンター展」が行われています。今回は、国立科学博物館の海のハンター展を見に行きました。
国立科学博物館の概要
国立科学博物館とは、自然や科学技術に関する総合科学博物館です。明治時代の1877年に創立され、日本国内で最も歴史のある博物館となっています。館内には400万点を超えるコレクションを保管し、日本人だけではなく外国人も多数訪れる大型の博物館です。
展示は常設展と特別展の2種類があります。常設展は、日本列島の成り立ちや自然を紹介した「日本館」と地球の生物や科学技術などを紹介した「地球館」に分かれています。日本館は地下1階~地上3階、地球館は地下3階~地上3階というフロア構成で、1日で全てを見ることは大変なほどのボリュームになっています。また、常設展だけではなく、期間限定で別料金の特別展も開催されます。
開館時間は、通常が9時~17時(最終入館は16時30分)で、金曜日のみ9時~20時(最終入館は19時30分)です。毎週月曜日が休館日ですが、月曜日が祝日の場合は翌日の火曜日が休館日となります。常設展の入館料は、大学生以上の大人が620円、高校生以下が無料となっています。
JR「上野」駅(公園口)から徒歩5分、東京メトロ銀座線・日比谷線「上野」駅から徒歩10分、京成線「京成上野」駅(正面口)から徒歩10分です。上野駅から歩いて上野恩賜公園に着いたら、東京文化会館と世界遺産に登録された国立西洋美術館の間を歩き、国立西洋美術館の先で右折します。そこから少し歩くと、右手に国立科学博物館の入り口が見えてきます。海のハンター展の入り口の前にはスタッフさんが立って案内をしていますので、それを目印に探してください。
海のハンター展の概要
先日までは特別展として「恐竜博」が開催されていましたが、2016年7月8日~10月2日までは「海のハンター展~恵み豊かな地球の未来~」が行われています。海の大型捕食者の姿や生態をテーマにした企画展で、サメやシャチなど約160点の標本が展示されています。解説は英語でも記載されており、外国人の方も楽しむことができるようになっています。
開館時間は先述した常設展と同じです。ただし、8月11日~8月17日までは夏休み特別開館延長の期間として、金曜日以外は18時まで、金曜日は20時まで開館しています。入場チケットの料金は、大学生以上の大人は1600円、小学生~高校生までが600円、それ以下の子供が無料となっています。また、特別展の入場料を払うと、当日に限り常設展も無料で見ることができます。なお、再入場をすることはできません。
最後に、海のハンター展の会場マップを記載しておきます。会場は二つに分かれており、第1会場はさらに4つのエリアに分かれています。
・第1会場
第1章 太古の海のプレデター
第2章 大海原のハンター
第3章 海のハンターたちのテクニック
第4章 ヒトも海のハンター
・第2会場
泳げマイハンター
海のハンターショップ
海のハンター展の様子
今回は、平日の12時過ぎに海のハンター展を見に行ってきました。平日にも関わらず上野公園は混んでおり、若い人から外国人まで様々な人が歩いています。世界文化遺産に登録されたばかりの国立西洋美術館を眺めながら国立科学博物館へ向かいます。
私は前売券を持っていなかったので、チケットカウンターにて当日券を購入します。運良く誰も並んでおらず、すぐにチケットを買うことができました。そのまま建物に入り、動画撮影やフラッシュ撮影などが禁止である旨の説明を受けます。そして、いよいよ海のハンター展が始まりました。
海のハンター展は、主に3種類の展示があります。一つ目は、海のハンターに関する詳細な解説が文章で書かれた解説パネルです。二つ目は、生物の標本やレプリカの展示です。三つ目は、1分~5分ほどの解説動画です。解説動画は全部で15個くらい上映されており、理解を深めやすくなっています。なお、解説動画だけは撮影が禁止されています。
第1章 太古の海のプレデター
古生代、中生代、新生代に生息した海のハンターを展示したコーナーです。脊椎動物がアゴを持って大型の獲物を食べられるようになった結果、巨大化していった海の生き物たちを見ることができます。
新生代に活躍した史上最大で最強のサメである「カルカロドン・メガロドン」です。自然淘汰や偶然によって大型化し、全長が15〜20メートルにまで達するそうです。映画にも登場するその巨大すぎる口からは、大型の魚類やクジラを食べていたと言われています。
「カルカロドン・メガロドン」のアゴの化石です。地球史上最強の噛む力を持ち、1本の歯にかかる力は18トンになると推測されています。ティラノサウルスが6トン、ホホジロザメが1.8トンですから、それらと比較してもどれほど力が強かったのか分かります。
「カルカロドン・メガロドン」の歯の化石です。巨大な歯は15センチの大きさもあり、しかも歯の周りにはステーキナイフのようにギザギザに尖っていました。
「ズンガリプテルス」のレプリカです。中生代に生息した大型の翼竜(よくりゅう)で、魚や甲殻類などを空から狙って食べていたと言われています。
第2章 大海原のハンター
深海、極域、外洋、浅海という海の領域ごとに、食物連鎖のトップに位置する海の生物を集めたコーナーです。深海魚やサメ、シャチなど様々な魚を観察できます。
まず最初に深海魚のエリアがあります。深海とは、水深が200メートルよりも深い場所を指します。太陽の光が少なく、餌となる生物が少ない過酷な環境で生きる魚を知ることができます。上の写真は、水深290メートルから2334メートルに生息する「ホラアナゴ」という深海魚です。
「サメガレイ」という深海魚です。他にも珍しい深海魚が沢山展示してあります。
鼻先が長く、捕食の際に上アゴと下アゴが前方に飛び出す「ミツクリザメ」です。別名で「ゴブリンシャーク(悪魔のサメ)」と呼ばれ、奇妙で恐ろしい外見をしています。こんな魚が現在も生息しているなんて不思議ですね。
他にも「外洋」のエリアには「サメ・ラボラトリー」として合計25種類のサメが展示されています。サメの展示や解説が多いことは、海のハンター展の特徴です。サメが獲物を探す方法についても説明があり、なんと数キロ先からも音によって獲物の存在を感知できるようです。
次は「極域」エリアです。陸上ではマイナス90度近くまで記録されているほど寒い環境で暮らす生物を集めています。ここでは、ホッキョクグマやオウサマペンギンなど、お馴染みの生物が展示されています。
珍しかったのは、ホッキョクグマの体毛に触れることです。実際に触ってみると体毛は固く、極寒の環境でも体温を逃さないように厚みがあることが分かります。
アザラシの中で最大の大きさを誇る「ミナミゾウアザラシ」の巨大さに驚きました。
最後は「浅海」のエリアです。浅海とは、水深が200メートルよりも浅い場所を指します。上の写真は「ネコザメ」です。顔が猫のようになっていて可愛いです。貝殻を割って食べることから、別名で「サザエワリ」とも言われています。
「カスザメ」です。恐ろしい外見からは美味しいようには全く見えませんが、食用として人気で絶滅の危機に瀕しています。
人間ほどの大きさがある巨大な「ウミガメ」です。
そして、今回の特別展で一番の見所となる「ホホジロザメ」の成魚の全身標本です。標本の隣では、本物のホホジロザメをホルマリンにつけて液浸標本(えきしんひょうほん:保存のために水溶液につけた標本)を作る過程がビデオで解説されています。
ホホジロザメを真正面に立つと鋭い歯が見えます。サメの歯は複数の層になっており、歯が古くなると抜けて、後ろの新しい歯が出てくるそうです。
ホホジロザメが生きている時に襲われた傷などもあり、かなり生々しい感じです。単なる模型ではなく、実物のホホジロザメだと思うと迫力がありますね。
第3章 海のハンターたちのテクニック
特殊なエサの狩り方をする魚を解説したコーナーです。また、その逆で天敵から食べられないために様々な手段を講じている魚を集めています。
ノコギリのようなものを振り回して致命傷を与える「ノコギリエイ」です。
海底に潜んで口を大きく開いて餌を捕食する「キアンコウ」です。
空だけではなく、水中の中も羽ばたくことによって素早く動き、獲物を捕らえる「ウトウ」です。
敵に襲われたときに水を飲んで体を膨らませ、相手を威嚇する「ミドリフサアンコウ」です。
毒を使って天敵から身を守る魚を集めたコーナーもありました。
泳いでいる姿が愛らしく、ペットとしても人気な「ハコフグ」がいました。水族館で見かけると、ついつい長時間見てしまいます。ただし、ここに展示されていたハコフグは水色の光沢があって、いかにも危険な香りが漂っています。
第4章 ヒトも海のハンター
人間が魚を捕獲する手法を解説したコーナーです。また、クロマグロの養殖やニホンウナギなど、人間と魚の共生について語られています。
世界初のクロマグロの完全養殖を紹介した展示がありました。受精卵から始まって成魚になるまでの過程が解説してあります。
泳げマイハンター
自分がスケッチした魚をスキャンし、巨大なスクリーン上で泳いでいる様子を鑑賞できるデジタル・アクアリウム企画です。場所は順路に従って進んだ先の第2会場にあり、誰でも無料で参加することができます。一から魚をスケッチするか、あらかじめ用意されている魚の雛形に塗り絵をするか、2通りの方法があります。用紙にスケッチが終わったら、スタッフさんに渡すとその場でスキャンされ、スクリーンに映し出されます。私が行ったときには、3人くらいの人がスケッチをしていました。
お土産ショップ
特別展の出口にはお土産を販売している「海のハンターショップ」があります。キーホルダーやぬいぐるみ、お菓子や本、サメのマグカップなど、一通り定番のお土産は全て売られています。また、特別展を出た後も、日本館の地下1階に「ミュージアムショップ」という広いお土産ショップがあります。「ミュージアムショップ」の方はインターネットのWEBショップからも購入できるようなので、特別展のお土産ショップで買ったほうが良いかもしれません。
シアター36○
常設展の展示エリアである日本館の地下1階には「シアター36○(サンロクマル)」があります。海のハンター展を利用した人は無料で利用できます。
シアター36○とは、上の図のように球体の空間の中に透明の通路が設置されており、360度全方位から音楽や映像を楽しめるシアターです。上映時間は全体で約10分で、一つ5分の作品が2本続けて上映されます。一度に入場できる定員は60名で、それを超えた場合には次の上映を待つことになります。ただし、次々と上映が行われるので、平日であればそんなに待つことはありません。なお、撮影や飲食は禁止されています。
現在の上映スケジュールは「恐竜の世界–化石から読み解く–」と「海の食物連鎖–太陽からクロマグロをつなぐエネルギーの流れ–」です。私の前に並んでいるのは一人で来ている若い女性と年配の男性で、一人で見に来ている人も多いです。また、ベビーカーで見ている家族連れも見かけました。内容は迫力のある映像と音楽で、一瞬にして引き込まれます。過去にも利用したことがありますが、相変わらず楽しいです。子供でも分かる平易な内容で、叫んで喜んでいる子供が沢山いました。上映が終わったときには、「もう一度見たい」と親にお願いしている声が聞こえるくらい人気のスポットです。空いているのであれば、是非体験してほしいおすすめの場所です。
その他の常設展の展示
出口までに見かけた常設展の展示をほんの一部だけ紹介します。
地球が自転していることを証明する「フーコーの振り子」です。
地球最大の動物である「シロナガスクジラ」の原寸大模型です。本来は海に泳いでいますが、ここでは青空の中を飛んでいます。
食事処
地球館の中2階には「ムーセイオン」というレストランがあります。海のハンター展の入り口エスカレーターの先に行くと、レストランへ続く階段があります。ポークソテーやオムライス、天重など、意外と色々なメニューがあります。「恐竜の足型ハンバーグ」など博物館にちなんだ料理も面白そうです。
また、上野駅周辺やアメ横には美味しいグルメが沢山ありますので、博物館ではランチやディナーを食べないという選択肢もあります。特に、上野には美味しいラーメン屋が多いです。
アトレ内にある「一蘭」です。14時くらいの中途半端な時間帯でも常に10人〜20人くらいの行列ができている人気店です。カウンター席の両隣に仕切りがあって、半個室みたいになっている点が特徴です。豚骨味の美味しいラーメンで、味の濃さや麺の固さなどをオリジナルでオーダーすることができます。
「一蘭」の隣にある「舎鈴」というラーメン屋です。東京駅などで大行列になっている「六厘舎」というラーメンに似た味で、魚介系のスープです。麺が太いため、太麺好きにおすすめです。
混雑状況
平日に訪問しましたが、比較的混雑しています。入場チケットを購入する際には並びませんでしたが、館内に入ってからは人が多くいました。展示や解説動画では、前の人が見終わるのを待つケースが多くありました。一人客もいましたが、家族連れも多く、子供が沢山いる印象でした。海のハンター展は夏休みの自由研究などにも利用される可能性があるため、7月末や8月にはさらに混雑する可能性があります。
なお、当日の混雑状況は国立科学博物館のホームページに記載されています。「待ち時間はありません」といった感じで記載されていますので、それをチェックしてから行くと良いでしょう。ただし、あくまで入場するまでの待ち時間を書いているようで、館内に入ってからの混雑状況は関係ないようです。私が行った日も「待ち時間はありません」でしたが、館内は結構混んでいました。
また、仮に入場チケットを購入するまでに待ち時間がある場合には、オンラインショップで事前に購入することができます。海のハンター展の特設イベントホームページにある「公式オンランチケット」というリンクをクリックすると購入ページが表示され、個人情報やクレジットカード情報を入力して購入できます。以前、別の企画展に行ったときは入場チケットを購入する際に20人くらい並んでいたことがあったので、当日行ってみて混雑している場合には、その場でスマホを使ってオンラインチケットを買うと良いでしょう。
所要時間
私は全ての解説をしっかりと読みながら進みましたが、2時間くらいかかりました。これに加えて、「シアター36○」を並んで鑑賞するのに約20分の時間が必要でした。私はサラッとしか見ませんでしたが、お土産を選んだり、レストランで食事をすればさらに時間が必要です。今回は常設展を見ませんでしたが、常設展を見る場合にはかなりの時間が必要です。過去に企画展を見た後に常設展を見たときは、1時間くらい見たけれどほんの一部しか見ることができず、疲れて帰宅してしまいました。常設展を全て見るには相当な時間が必要ですから、海のハンター展を見た後は気になるエリアだけ見に行くと良いでしょう。
感想
今回は国立科学博物館の海のハンター展を見に行きました。近年の企画展は全て見に行っていますが、毎回外れがなく、満足して帰っています。巨大な展示や動画を使った解説など、来客を楽しませるような見せ方が上手いと思います。入場料が少し高いところがマイナスですが、常設展も見る人にとってはお得です。子供から大人まで全員が楽しめる展示なので、是非夏休みを利用して行ってみて下さい。