弥生時代の大規模遺跡を楽しく学べる吉野ヶ里歴史公園に行きました

吉野ヶ里歴史公園

佐賀県の吉野ヶ里遺跡には、弥生時代の大規模な集落が復元されています。今回は、吉野ヶ里遺跡に何度も行っている私が見所を紹介すると共に、おすすめのモデルコースや実際に訪れた感想などを詳しく説明していきます。

目次

吉野ヶ里歴史公園の概要

吉野ヶ里歴史公園とは、佐賀県吉野ヶ里町と神埼市にまたがる国営公園です。公園内には吉野ヶ里遺跡があり、弥生時代の大規模な環壕集落(周囲に堀をめぐらせたムラ)を復元しています。

出土品を展示・解説する施設や火おこし体験などができる施設が充実しており、当時の歴史について見たり体験したりしながら理解を深めることができます。また、アスレチックやバーベキューコーナーなど、広大な敷地内には野外で遊ぶ公園としての機能も持っています。

基本情報

営業時間

午前9時~午後17時(6月〜8月は18時まで)

休園日

12月31日、1月の第3月曜日とその翌日

料金

15歳以上の大人:420円、小・中学生:80円、65歳以上:200円

交通アクセス

JR吉野ヶ里公園駅から吉野ヶ里歴史公園(東口)まで徒歩で約15分、JR神埼駅から吉野ヶ里歴史公園(西口)まで徒歩で約20分
※東口は遺跡があるエリア(環壕集落ゾーン)に近く、西口はアスレチックなどがあるエリア(古代の原ゾーン)に近いです。駐車場はどちらにもあり、普通車の料金は310円です。

園内マップ

吉野ヶ里歴史公園の園内マップ

吉野ヶ里歴史公園の敷地は非常に広く、以下の4つのエリアに分かれています。エリア間は徒歩で移動するか、園内バスが運行しています。

・入口ゾーン
JR吉野ヶ里公園駅から来たときの入り口です。駐車場、レストラン、お土産の売店、吉野ヶ里遺跡の概要を学べるガイダンスルームやミニシアターがあります。ミニシアターは3分間隔で上映しており、1回あたり12分の長さです。ミニシアターは純粋に面白いので見ることをおすすめします。

・環壕集落ゾーン
弥生時代の集落があるエリアで、吉野ヶ里歴史公園の観光では絶対に外せない中心スポットです。「南内郭」や「北内郭」という集落の他に、火おこしや勾玉づくり体験ができる「弥生くらし館」などがあります。

・古代の森ゾーン
弥生時代の森を再現した「古代植物の森」や死者を埋葬するお墓「甕棺墓列(かめかんぼれつ)」などがあります。

・古代の原ゾーン
JR神埼駅から来たときの入り口です。駐車場、「弥生の大野」と呼ばれる芝生広場、子供が遊べるアスレチックなどがあります。
注意点

入口ゾーンはチケットをスタッフに見せて入場する前の場所にあります。つまり、チケットがなくても売店やミニシアターなどに入れますし、間違って入場してしまえば、一度退場しない限り売店やミニシアターは見られません。

吉野ヶ里遺跡には何があるの?

遺跡なんて学生の頃に教科書で学んだくらいで、普段は馴染みのない人も多いと思います。そこで、吉野ヶ里遺跡に行ったら何を見ることができるのか、5つの見所を紹介します。

1. 物見櫓 (ものみやぐら)

物見櫓

高い位置から周囲の敵を見張り、集落を守る役目を持っています。南内郭と北内郭に複数の物見櫓があります。観光客は階段を上って当時の弥生人と同じ景色を眺められます。

2. 竪穴住居 (たてあなじゅうきょ)

竪穴住居

一般の庶民や指導者たちが暮らしていた住居です。地面を掘り下げているので、半分ほど地下に埋まっている形になります。観光客は竪穴住居の内部に入って見学できます。

3. 高床倉庫 (たかゆかそうこ)

高床倉庫

祭りの道具や宝物、武器、穀物などを貯蔵していた倉庫です。「中のムラ」と「倉と市」に数多くの高床倉庫があります。草葺き(くさぶき)の屋根は内部の湿気を防ぎ、柱からネズミの侵入を防ぐ「ねずみ返し」が設置されています。

4. 環壕 (かんごう)

環壕

集落を囲っている大きな溝のことです。環壕集落ゾーンの入り口、南内郭と北内郭に環壕があります。

5. 城柵 (じょうさく)

城柵

環壕と同じく集落を囲う木の柵です。弥生時代は激しい争いが多く、城柵を使って敵の侵入を防ぐ必要がありました。北内郭の城柵は、神聖な場所を外部と隔てる役割も持っています。

環壕集落ゾーン

ここからは、4つのエリアの中で大規模な遺跡がある環壕集落ゾーンについて詳しく紹介していきます。

入り口

環壕集落ゾーンの入り口

この鳥居のような門が環壕集落ゾーンの入り口になります。

外壕と逆茂木

入り口には溝や柵があり、「逆茂木(さかもぎ)」と呼ばれるとがった木の枝や幹でバリケードを築いています。米作りが盛んになるにつれて水や土地を奪い合う争いが起こるようになり、集落の入り口は厳重に守られていました。

南内郭 (みなみないかく)

南内郭

弥生時代の身分階層の中では最も上位に位置し、政治を行っていた「大人(だいじん)」が住む場所です。そこには、大人の中でも最高権力を持つ王も含まれていました。

南内郭の竪穴住居

王や大人が住んでいた住居の中を見学できます。

南内郭の内壕

南内郭の周囲には「内壕」という溝があります。入り口にある溝とは異なり、こちらは重要な区域である南内郭をその外側とは区別する役割もありました。

倉と市

倉と市

日本各地の特産品を取引する市が開かれていた場所です。市で取引した品物を保管する倉庫群もあります。

展望台

ちょっとした展望台があり、写真撮影には絶好のスポットです。

弥生の大野

展望台からは古代の原ゾーンの「弥生の大野」が見えます。

南のムラ

南のムラ

ここは庶民が暮らしている村です。農耕を行って収穫した作物を租税として収め、南内郭や北内郭に住む支配者層の生活を支えていました。

弥生くらし館

弥生くらし館

「勾玉づくり(200円または250円)」や「火おこし(100円)」、「土笛づくり(100円)」などを体験できる施設です。事前予約はなく、当日に受付を行います。私が行ったときは大勢の子供が学校の授業で体験をしており、大人だけで遊ぶような雰囲気ではありませんでした。体験プログラムだけではなく、館内には資料の展示やビデオを上映していたり、自動販売機などもあります。

北内郭 (きたないかく)

北内郭

祭りや政治の中心地になっていた場所です。最高司祭者の住まいである「高床住居」などがあります。

まつりごとを行う北内郭の施設

高さが16.5メートルにも及ぶこの巨大な建物は、まつりごとを行う際の最重要施設です。

まつりごとを行う北内郭の施設

建物の中では、指導者たちが重要な事柄について話し合ったり、祈りを捧げる儀式などが行われていました。

中のムラ

中のムラ

北内郭の祭りで神様に捧げるために、お酒や道具を作って保管していた場所です。

北墳丘墓 (きたふんきゅうぼ)

北墳丘墓

右側の緑色の丘は吉野ヶ里を治めていた王の墓で、北墳丘墓と呼ばれています。

北墳丘墓の丘の内部

丘の内部には甕棺(かめかん)という棺(ひつぎ)が展示されています。また、甕棺を使った死者の埋葬方法などを解説してあります。

甕棺の実物

甕棺の実物です。北墳丘墓の甕棺は、一般の墓とは違って貴重な副葬品が一緒に納められており、死者の身分の高さを示しています。

古代の森ゾーン

遺跡エリアを離れ、ここからは古代の森ゾーンについて詳しく解説していきます。

古代の森ゾーン

古代植物の森

古代植物の森

生物多様性を高めることなどを理由に、弥生時代の森を再現したエリアです。遠く離れた佐賀市富士町の森林をトラックで移植しています。実際に森林の中を歩いてみましたが、普通の森林なので目新しさはなく、虫が多く飛んでいました。時間が余っているのでなければ、わざわざ行く価値はないと思います。

古代植物館

古代植物館

古代植物館では、「弥生時代の森と人の関わり」をテーマにした展示があります。採取された種子や花粉などを見られますが、展示の規模は大きくありません。また、事前予約制の体験プログラムを実施しています。

甕棺墓列 (かめかんぼれつ)

甕棺墓列

北墳丘墓にも登場しましたが、甕棺は大型の土器を使った弥生時代のお墓です。吉野ケ里遺跡では3000個以上の甕棺が発掘されています。その甕棺が長い列状に並べられているのが甕棺墓列です。北墳丘墓の甕棺は身分の高い人たちが埋葬されていたのに対して、甕棺墓列は一般の人々が対象でした。装飾をつけた少女や頭のなくなった戦士などの人骨が発見されています。

吉野ヶ里歴史公園のランチ

吉野ヶ里歴史公園レストラン

食事ができる場所は「吉野ヶ里歴史公園レストラン」だけです。場所は「入口ゾーン」にあり、隣にはお土産売り場があります。「佐賀県産和牛コロッケ定食(980円)」や「有明海産の貝汁定食(950円)」、「チャンポン(920円)」など、地元佐賀や九州の食材を使ったメニューが豊富にありました。

吉野ヶ里歴史公園のモデルコース

園内は非常に広く、全てを見ようとすれば一日あっても足りないかもしれません。園内を移動するだけでもかなり足が疲れるので、どこを見るか候補を絞った方が良いでしょう。見逃してはいけないスポットは、環壕集落ゾーンの南内郭と北内郭です。それ以外は時間と興味次第で見に行けば良いと思います。

ここからは、私がおすすめするモデルコースを紹介しますので、参考にしてください。

・遺跡集中コース (所要時間は120分)
吉野ヶ里歴史公園の目玉である遺跡に絞って観光するコースです。まずは、入場前に入口ゾーンのガイダンスルームとミニシアターで概要を学びます(約20分)。その後は環壕集落ゾーンに行き、南内郭や北内郭などの遺跡をじっくりと鑑賞します(約100分)。

・公園満喫コース (所要時間は180分)
遺跡エリアだけではなく、古代の森ゾーンまで足を運ぶコースです。まずは、入口ゾーンのガイダンスルームとミニシアターで概要を学びます(約20分)。その後は環壕集落ゾーンに行き、南内郭の周辺、北内郭の周辺という順に遺跡を少し足早に鑑賞します(約80分)。北墳丘墓から「ひみかのみち」を通って古代の森ゾーンの甕棺墓列を鑑賞します(移動時間をあわせて約25分)。ちなみに、北墳丘墓から古代の森ゾーンまではバスで行くこともできます。そこから古代植物の森と古代植物館を見たら、祭りの広場を通って入口ゾーンに帰ります(移動時間をあわせて約55分)。

古代の原ゾーンには子供が好きそうなアスレチックや広場がありますが、これらは全国どこにでも似たようなものがあるので、個人的にはおすすめしません。それだったら、環壕集落ゾーンの弥生くらし館で「ものづくり体験」をした方が良いと思います。

また、古代の森ゾーンの甕棺墓列は面白いですが、古代植物の森と古代植物館はそんなに見所がありません。そのため、あまり疲れたくないという人は「遺跡集中コース」がおすすめです。

季節のイベント

大賀ハス (6月~7月頃)

大賀ハス

大賀ハスとは、大賀一郎博士が地下から発見された弥生時代の古代ハスの実を発芽させて開花に成功したものです。吉野ヶ里歴史公園は大賀ハスと同じく弥生時代のDNAを引き継ぐ遺跡として種子を提供され、6月から7月頃には見頃を迎えます。

大賀ハス

大賀ハスはピンク色の花を咲かせます。非常に貴重なのでタイミングが合えば見に行ってみてください。

光の響 (12月)

吉野ヶ里歴史公園のライトアップ(光の響)

吉野ヶ里歴史公園では、12月になると「光の響」というライトアップのイベントが開催されます。

吉野ヶ里歴史公園のバルーン夜間係留(光の響)

光の響の一つ目の見所は、バルーンの夜間係留です。佐賀県といえば来場者数が80万人を超える「バルーンフェスタ」が有名で、このようなバルーンのイベントは佐賀らしさがあります。バルーンの夜間係留では、夜の暗闇をバーナーの音と炎が盛り上げます。

吉野ヶ里歴史公園のキャンドル(光の響)

二つ目の見所は、キャンドルです。南内郭には赤、黄、白色などのカラフルなキャンドルが無数に置かれ、ぼんやりと会場を照らします。

吉野ヶ里歴史公園のキャンドル(光の響)

都会のイルミネーションのように派手過ぎないところが光の響の良いところ。吉野ヶ里歴史公園の雰囲気を壊しておらず、幻想的なライトはデートにもおすすめです。

吉野ヶ里歴史公園の花火(光の響)

一番の見所は、最後に行われる花火です。物見櫓の背景に迫力のある花火が何発も打ち上がります。

吉野ヶ里歴史公園の屋台(光の響)

唐揚げや佐世保バーガーなど、食べ物の屋台が少しだけありました。吉野ヶ里歴史公園の光の響は人気のイベントのため、会場は比較的混雑しています。南内郭の花火よりはバルーンの方が狭くて混んでいる感じはしました。また、私が行ったときは入り口のチケットを買うところが行列でした。それでも、光の響はとても綺麗なので、わざわざ行く価値はあります。近くに住んでいる人や佐賀県に旅行をする人は出かけてみてください。

吉野ヶ里遺跡に旅行した時におすすめの宿泊先

嬉野温泉の大正屋清流

吉野ヶ里遺跡は佐賀駅に近く、佐賀駅には安いビジネスホテルが多くあります。しかし、せっかく佐賀県に旅行に来たのに、全国どこにでもあるようなビジネスホテルに泊まるのはもったいないです。実は、佐賀県には嬉野温泉、武雄温泉、太良竹崎温泉というように有名な温泉が数多くあります。

その中でも嬉野温泉は日本三大美肌の湯として知られ、女性や年配の方に人気の宿泊先です。私も何度か嬉野温泉に泊まっていますが、その中で良かったのが「嬉野温泉 大正屋 湯宿 清流」です。

嬉野温泉の大正屋清流

大正屋は大正14年創業で嬉野温泉の中でも有名な老舗で、料理や接客が良いことはもちろん、個人的に気に入ったのは嬉野温泉めぐりができることです。大正屋の清流に宿泊すると、大正屋と椎葉山荘という2つの系列旅館の温泉にも無料で入ることができます。大正屋は徒歩で行けて、椎葉山荘には無料のシャトルバスが運行しています。

感想

事前に勉強をすることなく訪問しましたが、入口ゾーンには概要を解説するビデオを上映していますし、遺跡エリアでは個々の建物の前にも説明があるので、特に問題なく楽しむことができました。竪穴住居や高床倉庫など初めて実物を見るものが多く、好奇心を満たしてくれます。遺跡だけではなく、田舎ならではの山々や自然が美しく、意外にも写真映えする観光スポットです。歴史好きな大人であれば最高の場所ですし、私が行ったときには小学生が物見櫓に登ったり竪穴住居の中をのぞいたりと、楽しそうに学んでいるのが印象的でした。園内を歩いているとスタッフの方が声をかけてくださり、挨拶や道案内をしてくれました。そうした優しい接客もポイントが高いです。周囲に太陽を遮るような高い建物はなく、歩く距離は多いので、夏の季節には熱中症に気をつけてください。自動販売機は園内に何カ所かありますが、持参するか入り口で買った方が良いでしょう。

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